ロールシャッハ・テストとは
ロールシャッハ・テストは、スイスの精神科医Rorschach, H. (1884-1922)が創始した投影法*の心理検査です。投影法の中でも、その実施やスコアリング、解釈には相当な訓練と経験を必要とします。
*その他の投影法検査:SCT、TAT、P−Fスタディ、バウムテストなど
ロールシャッハ・テストでは、左右対称のインクのしみによる図が描かれた10枚のカード(図版)が用意されています。実施者は、それらの図版を順番に受検者に提示し、それが何に見えるか、なぜそう見えるかを説明してもらいます。その回答を分析することによって、実施者は受検者のパーソナリティ特徴や無意識的な衝動や欲動、知覚パターンなどを理解することができます。
検査の有効性
医療機関での実施においては診療報酬の対象となる検査ですが、質問紙法と比べ、心理検査の有用性を担保する妥当性・信頼性の検証が難しく、その有用性についてはさまざまな議論があることも確かです。しかしながら、外部から直接観察できない、あるいは本人自身が自覚していないパーソナリティ特徴を測ることができるという点や、受検者が意図的に回答をゆがめることができない、という点では、一つの有効な検査法だと言えます。他の心理検査とテスト・バッテリーを組むなどし、ロールシャッハ・テストを情報収集の一手段として位置づければ、より深く受検者を理解し得るといえます。そのため、心理臨床の面接においてクライアントを理解するために広く活用されています。
ロールシャッハ・テストの歴史
Rorschachは当初、統合失調症の患者とそうでない患者が、インクのしみに対して明らかに異なる反応をすることに気づきました。研究をすすめる中で、インクブロット(インクのしみでできた刺激図)が個人のパーソナリティを明らかにする有効なツールとなることを発見し、図版の出版にこぎつけます。37歳という若さで亡くなったRorschachは、亡くなる前年である1921年に、彼によって書かれたロールシャッハ・テストに関する唯一の著書、『精神診断学』を出版しました。彼自身がインクブロットの研究を行った期間は4年弱と決して長い期間ではありませんでしたが、その研究は、彼の死後、主にアメリカで発展していきます。
さまざまなアプローチ法
ロールシャッハ・テストには、その実施方法や解釈の仕方にいくつものアプローチ法があります。具体的には、アメリカでは、クロッパー法・ベック法・ヘルツ法・ピオトロフスキー法・ラパポート法という5つの代表的なアプローチ法が発展しました。Rorschachが作成した10枚の図版を使うという点は共通しているのですが、これだけ様々なアプローチ法がある背景には、インクブロットテストに興味を持った研究者達が、独自に研究を重ねたことがあると言えます。
上記の各アプローチ法について、実証的裏づけなどに疑問を持ったExner, J. E.(1928-2006)は、膨大なデータを統計的に分析した上で、これら5つの体系を包括したエクスナー法(包括的アプローチ)を確立します。アメリカでは現在、このエクスナー法が圧倒的な支持を得ています。
日本での発展
日本では、第二次世界大戦後、米国から導入された臨床心理学の発展とともにロールシャッハ・テストが普及しました。片口安史(1927‐1995)が体系化した片口法は先のクロッパー法を基にしています。また日本には、その他、阪大法・名大法等のアプローチ法があります。
金子書房では、ロールシャッハ・テストに関連する書籍・検査として以下のようなものを扱っています。以下は、背景にあるアプローチ法ごとにあえてマテリアルを分類してみました。なお、ロールシャッハ・テストの10枚の図版(スイス原版)は、日本文化科学社から販売されています。


書籍
ヘルマン・ロールシャッハ著
鈴木睦夫 訳
定価8,400円(本体8,000円+税)
「精神診断学」を補完する「形態解釈実験の活用」を含む完全版。創案者Rorschach, H.の原点となる概念に触れることが可能な一冊です。原著を忠実に訳すとともに、巻末には訳者の要約と私見が加えられています。

書籍

整理用紙
片口安史 著
定価7,875円(本体7,500円+税)
片口法ロールシャッハ・テストの検査結果を集計、記録するための整理用紙です。
CD-ROM
書籍
片口安史 著
定価9,975円(本体9,500円+税)
「新・心理診断法」を増補改訂した、ロールシャッハ・テストの研究者・初学者のための決定版。ロールシャッハ・テストとは何か、施行・分類法、解釈法、臨床的適用について等を詳説し、読み応えのある一冊です。
書籍
片口安史 監修
藤岡新治 著
松岡正明 著
定価4,725円(本体4,500円+税)
『改訂 新・心理診断法』をテキストに、ロールシャッハ・テストの基礎学習をする人のためのサブテキスト兼練習問題集。多くの反応例を具体的にスコアリングしながら、その方法を正確に身につけるための入門書です。

書籍
辻悟 著
定価6,825円(本体6,500円+税)
把握型、体験型、形体水準、解釈の統合と臨床理解で構成されています。中級・上級者向けです。阪大法を整理スケールとしていますが、アプローチ法の枠を超えた読者を意識した一冊です。
書籍
辻悟 著
定価5,670円(本体5,400円+税)
より臨床的治療学的な視点から書かれた『ロールシャッハ検査法』の姉妹版。50年にわたる著者の研究成果の集大成です。
書籍
辻悟 著
福永知子 著
定価3,675円(本体3,500円+税)
阪大法スコアリングの全てが、分かり易くコンパクトにまとめられた一冊。関西ロールシャッハ研究会主催の講座テキストともなっています。

書籍
小川俊樹 編著
松本真理子 編著
定価4,620円(本体4,400円+税)
子どもの心を理解するためにロールシャッハを使用する意義を、これまでの研究や最近の子どもの心理学的特徴と合わせて論じた一冊。発達障害・児童虐待・不登校等の事例も紹介されています。子どもの臨床に携わる人にとって必読の書です。
検査用紙
本明寛 編
ロールシャッハ・テストは個別検査が原則ですが、当検査はあえて二重選択肢法をとり、集団で実施できるようにしています。主に警察や人事委員会でお使いいただいています。インクブロット(図)やその枚数はロールシャッハ・テストと異なりますが、整理や解釈の多くはそれに準じています。コンピュータ採点を利用することで、比較的手軽に実施いただける性格検査です。