ご利用の前に

現在、日本には多くの種類の心理検査がありますが、一般に心理検査の実施、及びそれに伴う診断と予測に関しては、次のような点に留意する必要があります。

  

 心理検査を実施する場合には、検査者が十分な知識と経験を持ち、また結果の解釈やその伝え方に習熟していることが必要です。
 投影法などの実施や判定の解釈などが複雑な心理検査は、十分な経験を積んだ専門家のみが使用できます。

 

 心理検査は、第一に適切な標本(統計学的調査の対象)と適切なデータ数を用いて標準化されていなくてはなりません。
 第二に、妥当性(測定しようとしているものを、実際にどの程度正確に測定しているか)、信頼性(測定結果の一致度・安定性)、客観性(誰が検査結果の採点を行っても同じ結果になること)を備えていることが必要です。

 

 検査の実施にあたっては、手引書や解説書どおりに行うことが大切で、自己流に行ってはなりません。

 

 

 心理検査は限られた一側面のみを測定するものであり、受検者の性格や能力、適性などすべてをとらえることは不可能です。したがって、検査者はどういう目的で何を知ろうとしているのかを明確にし、受検者に応じた心理検査を用いることが必要です。
 受検者にとって、果たしてその心理検査の実施が必要であるのか、また心理検査が受検者の問題解決にとって有効なのかどうかの検討が求められます。

 

 心理検査の結果は、物理的・心理的な影響を受ける可能性があります。
 物理的な影響とは、例えば不快な温度や騒音などです。
また受検者が周囲からの圧力を感じ、心理的に影響を受けることもあります。例えば検査の場所が学校か病院か、あるいは会社であるかによって、受検者の態度は異なってきます。会社の入社試験で心理検査を実施したとすれば、受検者は自分をよく印象づけようと回答しがちです。
 検査の実施者の役割や態度が、検査の結果に重大な影響を与えることも十分に考えられます。
環境を整え、検査結果に与えるマイナスの影響を最大限に取り除く努力が必要です。

 


 検査者は、検査実施時に、検査のやり方(取り組み方)を十分に説明する必要があります。また出来る限り、検査の目的を説明するように努めます。
 カウンセリング場面では特に、検査者にとって必要であっても、受検者の了解なしに検査を実施してはなりません。
また受検者が検査を受ける際の不安や恐れを取り除くことが必要です。
 検査を実施する前に、検査者と受検者との間に十分な信頼関係(ラポール)をつくることにより、検査を有効に実施することができます。

 

 一つの心理検査の結果だけで受検者が特定の疾患を持っているとか、何型の性格であると決めつけてしまうことは実に危険です。心理検査は、あくまでも受検者理解の手がかりの一つと捉えることが必要です。

 

 受検者に受検結果を伝える場合には、検査者が適切な指導や助言を行うことで、結果が受検者にとって有効に活用されるように工夫します。特にカウンセリング場面では、受検者に希望を与えるように、伝え方が工夫されなくてはなりません。