

いつも長電話になってしまう実家の母親から
今日も電話がかかってきました。家族のために
夕食の支度をしなくてはならないのに……。
あなたはどう対応するでしょうか?
- (1)どうしていつも忙しいときに電話をかけてくるのよ!
(ガチャン、と電話を切る)
- (2)早く切ってくれないかしら……(イヤイヤ話につきあってしまう)
- (3)いつも気にかけてくれてありがとう。いま夕飯の支度をしているから、あまり時間がとれないの。あとで掛け直してもいいかしら?(自分の気持ちをきちんと伝える)
日常生活のなかで、家族、友だち、子どもの友だちの親、職場の同僚や取引先など、まわりの人たちとのコミュニケーションがうまくいかずに悩んでいる人は増えているようです。できれば身近な他者とよりよい関係を結んで、豊かな交流をもちたいもの。
「自分の気持ちをなぜうまく伝えられないのだろう」という思いを抱えている方に、まずおススメなのは、『改訂版 アサーション・トレーニング――さわやかな〈自己表現〉のために』です。
「アサーション」は、1950年代に行動療法の一技法としてアメリカで生まれ、1960〜70年代には黒人や女性に対する差別撤廃運動の広がりのなかで発展しました。日本の心理臨床へは1980年代初頭、この本の著者である平木典子先生によって日本人に合うよう改良されたかたちで導入されました。それから学校や企業、医療や福祉の場面へと広がっていき、家族などの親しい間柄でもアサーションは必要とされてきています。本書には、自分も相手も大切にした「自他尊重」のコミュニケーションである「アサーション」についての紹介、誰もが等しく適切な表現で自分の気持ちを伝えてよいこと(アサーション権)などが、初めて学ぶ人にもやさしくまとめられています。
自分の気持ちをうまく相手に伝えることは、自分が何を感じているのかが理解されていなければできないものです。「自分とは何者なのか」「自分とうまくつき合うにはどうすればよいか」を考えるヒントとして書かれたのが、『自己カウンセリングとアサーションのすすめ』です。
自分の特徴をつかんで自分のよさを育てること、自分の気持ちを理解して相手に伝えること・相手の話を聴くこと、自己表現のスキルなどが学べます。自分をよく知って、自分をもっと好きになることはどんなに楽しいかを気づかせてくれる本です。
自分と相手とがより深く理解し合えるコミュニケーションをもつために「聴くこと」に着目したのが『アサーション・トレーニング 深く聴くための本』です。相手が伝えようとしていることをよく聴いて認めたうえで伝え返すところから、本当に豊かなつきあいが始まります。さまざまな状況に応じた聴き方のポイントが紹介されています。
他者を援助する仕事に就いている人たちは、日々の仕事において自分の気持ちに気づけなかったり、相手への遠慮で正直な気持ちを伝えるのを控えてしまったりすることがあります。その反動から、積もりに積もった不満が小さなことをきっかけに爆発してしまうことがあるかもしれません。援助の仕事をしている人たちにこそ自分を大切にしてほしい、うまく自己表現してもらいたい、そしてそれを援助の仕事に活かしてほしいという願いから生まれたのが、[アサーション・トレーニング講座](全3巻)のシリーズです。
カウンセラーはまさに援助職の代表といえるでしょう。『カウンセラーのためのアサーション』では、カウンセラーにとってのアサーションの意義、アサーションを取り入れたカウンセリングやグループ体験、実際の援助事例などが紹介されています。また、心理教育の大切さにもふれられており、コーチングや教職場面にも役立つ内容となっています。
『教師のためのアサーション』は、まず教師自身がアサーティブになることに加え、子どもたちへとアサーションを広げていこうと提唱しています。小中学校での実践例も紹介されており、具体的な実践のヒントが盛り込まれています。
医療の場では多くの職種・立場の人たちが関わり合い、さまざまな人間関係が織りなされます。『ナースのためのアサーション』では、患者さん、医師、ナース同士、医療チームのスタッフなどとさまざまな人間関係を同時に結びながら仕事が進んでいく状況において、ナースがアサーティブになることの大切さが書かれています。患者さんに尽くすあまり自分を大切にすることを忘れがち、あるいは医療チームで自分の考えを伝えるのが苦手、ということに思いあたるナースの方々に、ぜひお読みいただきたいです。
関西を中心に、どもる人本人、どもる子どもの親、ことばの教室の担当者、言語聴覚士、さらにはコミュニケーションや人間関係づくりに関心をもつ人たちで組織される日本吃音臨床研究会(主宰 伊藤伸二先生)の親子向けのサマーキャンプの様子をまとめたのが、『話すことが苦手な人のアサーション――どもる人とのワークショップの記録』です。
どもることから話すことへの苦手意識をもってしまい、気持ちを伝えることをあきらめてしまっている人たちに向けて、「緊張しても、どもっていても話していいですよ。私は私のままでいいと認めるところから自己表現を始めてみましょう」というメッセージが込められています。講師として招かれた平木典子先生の講演や自己表現の実習(DESC法など)をはじめワークショップの様子が参加者の質問も含めていきいきと描かれた、臨場感あふれる一冊です。
子どもたちにアサーションの力を育てるための本としては、次のものがあります。
『子どものためのアサーション〈自己表現〉グループワーク――自分も相手も大切にする学級づくり』は、学校の先生向けに子どもたちにアサーションを教えていくうえで知ってほしいことやグループワークの実施について具体的にまとめられています。
10代の子どもたちが安全に生きるために必要な知識・スキルとしてアサーションを紹介したのが、『自分を守る力を育てる――セーフティーンの暴力防止プログラム』です。暴力などから身を守るには、自分を大切だと思う気持ち(自尊感情)に気づくことが第一歩です。いじめ・ハラスメント・虐待・レイプなどから自分を守るアサーティブな言葉や態度について、教師・親、そして若者たち本人にぜひとも知っていただきたいです。10代の子どもたちのエピソードが盛り込まれ、読み物としての面も楽しめる翻訳書です。